
苦悩の渚 〜彼女のハミ毛〜 僕は海が嫌いだ。 別に海そのものが嫌いというわけではない。広い海を眺めているとおおらかな気持ちになれるし、ちっぽけな悩みなんて吹き飛んでしまう。母なる海なんてよく言ったものだが、そういう点では海は好きだ。 じゃあ、何が嫌いなのかというと、海水浴が嫌いなんです。そりゃ夏の海には刺激的なことがいっぱいで、水着姿のお姉さまなんかをサングラスの奥からたっぷりと視姦するのは男子諸君なら当然のことで、僕もご多分に漏れず視線が右へ左へ泳ぎまくったりしてるもんなんですが、そんなステキプレイスな海も僕には地獄のような災いを降り注いでくるのです。
僕にはどうやらメラニンというものが少ないらしく、日焼けが出来ない体質なんです。日光にさらされようものなら、肌はヤケドをしたように赤くただれ地獄のような苦しみの後、全く日焼けしないままシミになって残るという何ともやるせない体質。
高校生の夏休み。仲間で海水浴に行きました。男子は僕をはじめ4人、女子はここの日記などにたまに出てくるT子さんをはじめ3人。男女七人夏物語での出来事。 浜辺でビニルシートを敷いてみんなで談笑。その時僕はとんでもないことに気付いてしまいました。
ヤ、ヤバイな、これは見紛う事なきインモーじゃん!マ○毛じゃん! どうしよう・・・どうしよう・・・教えてあげるべきだろうか・・・でも、こんな皆のいるところで「毛がでてるよ(紳士風)」なんて言えるはずもない。彼女があまりの恥ずかしさに卒倒してしまうかもしれん。スレンダーでプリティカルな彼女がハミ毛・・・・イ、イカン!どうしてもソッチに目がいってしまう! さあどうする?このまま放置しておいて、民衆にT子さんのハミ毛を晒すわけにはいかない。でも女性にとっては男に指摘されるのは自殺ものではないだろうか・・・激しく葛藤しながらも、どうしてもチラリチラリと見てしまう。もう気になって気になって仕方ない。
「T子さん、ちょっと・・・・」 「えっなに?」 「いや・・・その・・・なんかワカメが食べたくなってさ」 アカン!意味わかれへん!
「えっ?なんで??」 う〜ん、考えはいいかもしれないが不自然だ。トイレに行ってくれればハミ出てるのを直すだろうが、男と女で連れションってものおかしい。
「えっなになに?」 「ムダ毛が出てるよ。それも3本」 男らしくストレートに言うのはいいが、デリカシーってのが無い。しかもハミ出てる本数まで指摘する必要は無い。
「あ〜アッツイな〜。カキ氷食べたいなぁ。ちょっと買ってくるわ。みんな食べる?」 「あ、俺も!」 「アタシも〜」 ウム、予想通りの反応だ。 「じゃあT子さん、ついてきて」 作戦通りT子さんを連れ出すことに成功する。
「あのさ、あのさ・・・」 まるで今から告白でもするかのように、緊張しながら話し始める。 「なんかそこ、毛みたいなのが付いてない?」 はみ出してるとは決して言わない、毛みたいなのが付いてると表現する。それは僕の出来る精一杯の優しさ。 「えっ?!・・・ヤダーーーーー!!!」 T子さんは瞬時に僕の言わんとしていることに気付き、まるでビキニラインに付いたゴミでも掃うかのように神の如き速さでハミ毛をしまっていた。 「イヤー、ハハハハ」 「アハ・・・アハハハ」 こんな時はもう笑うしかない。幸いなことにT子さんは下ネタも冗談も通じる娘だったので、海に身を投げるとかそんなこともなく何事もなかったかのように仲間の輪に戻りました。 それからしばらく、僕たちが変によそよそしかったのは言うまでもありません。
脳の髄を狂わせるビキニからはみ出る毛が嫌いだ。 |